前回は東洋医学的な鍼灸治療について書いてきました。
今回は当院が得意とする西洋医学よりの鍼灸治療の一つ、トリガーポイント鍼灸治療について説明していきます。
トリガーポイントという名前だけは聞いたことがある人も増えてきたかと思われます。
東洋医学的な治療に比べるとまだまだ歴史は浅いですが、治療技術と鍼メーカーさんの製造技術の進歩により、近年急成長中の治療法になります。
東洋医学的な治療と西洋医学的な鍼灸治療の違い
そもそも、東洋医学的な治療と西洋医学的な鍼灸治療はどのような違いがあるでしょうか。
ザックリ説明すると、東洋医学的な鍼灸治療は主に「経穴(ツボ)」、「脈」などを用いて治療方針を立て治療します。
西洋医学的な鍼灸治療、トリガーポイント鍼灸治療の場合は経穴(ツボ)や「脈」は使用せず、筋肉、腱などに構成される「トリガーポイント」を鍼や指で刺激しトリガーポイントを処理していきます。
東洋医学的な治療と西洋医学的な鍼灸治療の大きな違いは、「経穴(ツボ)」使用するかしないかの違いです。
トリガーポイントとは何か?
これは「引き金」という意味のtriggerと「点」という意味のpointから成る言葉で、その名の通り「痛みの引き金になる点」になります。
トリガーポイント(TP)は筋肉、筋膜、腱などに多く構成されます。
TPは圧痛点・経穴(ツボ)とは何が違うのか?
・圧痛点との違い
「トリガーポイントって、筋肉の中にある圧痛点のことですか?」とよく質問を受けます。
とても大雑把にいえば、この答えも間違いではありません。確かにTPは押すと痛いポイントなので、広い意味では圧痛点の一部に含まれると思います。
しかし、本来は圧痛点と全く異なるポイントになります。
圧痛点とは「単純に押して痛む部位」、トリガーポイントは押して痛むというだけでなく、刺激すると下記のような圧痛以外の特徴があります。
・関連痛と呼ばれる、圧痛部位を押すと押した部位と全く関係のない遠隔部位に痛みが出る。
・認知覚と呼ばれる、「まさに痛いところはそこです!」のような、痛みの再現ができる。
・副交感神経性自律神経現象といわれる、唾液分泌、鼻詰まり、腹鳴などが誘発される。
・ローカルトゥイッチと呼ばれる、筋肉が局所的に収縮する現象が起きることがある。
など、上記以外にも多彩な特徴があります。
経穴(ツボ)との違い
「トリガーポイントは高い確率で経穴と一致する」とよく言われます。
確かにTPが構成されやすい部位は、経穴が存在する部位と極めて近いことが多いです。
しかし、経穴が関連痛や認知覚などの特徴を兼ね備えているわけではありません。
経穴(ツボ)を使った鍼灸治療で経穴に対し鍼の適切な刺入深度が定められています。
それに対し、トリガーポイント鍼灸治療はTPが深部の筋肉に構成されれば、それに到達するような深度まで鍼を刺し、表層にある筋肉に対しては表層の筋肉に到達するように浅く刺します。
トリガーポイントと聞くと点をイメージし、経穴(ツボ)も点で構成されるので、点をイメージして、同じものなのかと考えると思います。
しかし、トリガーポイントは必ずしも点で構成はされません。
主に筋肉に構成されるので、筋肉全体がTP化することもありますし、索状硬結といわれるロープ状の塊のように構成されることもあります。
経穴(ツボ)=トリガーポイントという関係に必ずしも成りません。
あくまでも、TPが構成されやすい部位に東洋医学で使われる経穴の位置関係が類似しているだけであり、TPの決定には先ほど記述した特徴があるかどうかが決め手になってきます。
まとめ
今回は東洋医学的な鍼灸治療とトリガーポイント鍼灸治療の違い、経穴(ツボ)とトリガーポイントの違いについて説明していきました。
トリガーポイントという言葉がTVや雑誌などで特集されることが多くなり、だいぶ認知されてきています。
その反面、情報が多くなってきた影響で、曖昧な情報や憶測が飛び交い、経穴とトリガーポイントの違いがはっきりと分からないまま施術されている方が多いのが現状です。
せっかくの有用な治療法でも経穴とトリガーポイントの鑑別ができるできないで、治療効果は大きく変わってきてしまいます。
次回はトリガーポイント鍼灸治療の臨床例を交えて症状と効果についていこうと思います。