長年の臀部から脚にかけての痛み・痺れ【80代女性】

脚に痛みやシビレが発生し、病院を受診すると座骨神経痛と診断されることが大半です。

脚の痺れ=座骨神経痛とイメージしがちですが、脚の痺れの全ての原因が座骨神経痛が原因ではありません。

むしろ、脚の痺れの大半が座骨神経原因ではなく、臀部の筋肉が原因です。

そして高齢になればなるほど臀部の筋肉が萎縮していきます。

臀部の筋肉が萎縮すると、歩幅が狭くなり骨盤の回旋力が低下し、股関節に負荷がかかります。

股関節に負荷がかかり続けると、股関節を構成する臀部の筋肉に負荷がかかりトリガーポイントが形成されます。

臀部の筋肉の中でも特に中臀筋が脚のシビレに関与するケースが多いです。

中臀筋にトリガーポイントが形成されると、臀部側面が痛む、荷重すると痛む、臀部から脚の外側に沿って痺れ症状が出ることがあり、中臀筋のトリガーポイントの症状が座骨神経痛と間違われることが多くあります。

脚の痺れ=座骨神経が原因の概念が強く、臀部の筋肉が原因で脚の痺れ症状を引き起こしていると考えることが少ないため、長年脚の痺れを抱えている人が多いのです。

主訴
かれこれ5年前から左臀部〜下腿外側にかけて痺れる。酷いときは足先まで痺れることもある。

整形外科では座骨神経痛と診断されたり、腰の骨の間が狭いのが原因と診断される。

年齢による要因が大きいため手術するしか治療方法が無いと言われ、手術を避けるためにペインクリニックににも通院するが改善せず、ご相談をいただいた後に来院されました。

視診・触診
視診では姿勢の前傾が強く、臀部の筋肉を伸展させているような姿勢になっていました。
また、歩行時の歩幅の減少も見られました。
触診では左の中臀筋全体が筋緊張しており、手技にて刺激を加えるとどこを刺激しても左臀部〜下腿外側かけての痺れ症状の再現がありました。

治療
初回は臀部の筋肉全体の筋緊張が強いため、大臀筋、中臀筋、腰部多裂筋を広い範囲で鍼治療を施し筋緊張を緩和させました。2回目以降は中臀筋、腰部多裂筋下部のトリガーポイントを集中的に治療しました。

また、早期改善のため治療間隔を短く設定して来院していただきました。

・中臀筋

腸骨稜付近、大臀筋との筋連結付近、大転子付近に鍼を施術。

・腰部多裂筋下部

多裂筋の仙骨際に鍼を施術。

1回目 施術後脚全体が温かくなり、筋緊張が少なくなる。
2回目 痺れはまだあるが、臀部の痛みが重だるい感じに変化する。
4回目 痛みが減少し、シビレの範囲が狭くなり歩ける距離が増える。
5回目 臀部の痛みがなくなるが、引き連れる感じになる。痺れはほぼなくなる。
6回目 痛み痺れ共にだいぶ良い。
7回目 痺れ痛みが完全になくなる。

考察
今回のケースは典型的な中臀筋トリガーポイントが原因の痺れ症状でした。

筋肉が原因の痺れの場合は神経の治療をいくらしても改善しません。

痺れの原因が筋肉に形成されたトリガーポイントなのか?神経なのか?細かく鑑別する必要があります。

痺れ=神経が原因と決めつけず、『筋肉に形成されたトリガーポイントが原因の痺れ症状かもしれない』と考える事で治療の選択肢は大きく広がります。

また、高齢という事で痛みや痺れの改善を諦めてしまう方も多くいらっしゃいます。

確かに年齢を重ねれば重ねるほど自己治癒力は低下して治りは遅くなりますが、人間生きている限りは再生します。

完治までに時間こそかかりますが、治療していけば徐々に改善します。

まとめ
痺れ=神経が原因

脚の痺れ=座骨神経痛

この概念は根強く認識されています。

確かに上記の2つの概念は間違いではありません。

ですが、今回知っていただきたいのは『筋肉に形成されたトリガーポイントが原因でも痺れ症状が出現する事がある』『臀部の筋肉のトリガーポイントが原因で座骨神経痛と似た脚の痺れを引き起こす事がある』という事です。

座骨神経痛については後日詳しく書くので省略しますが、私の経験から臀部〜脚の痺れ症状で座骨神経痛と診断された方の8割以上は座骨神経が原因ではなく、大臀筋、中臀筋、小臀筋などの臀部の筋肉に形成されたトリガーポイントから発生する痺れ症状の割合が多いです。

「座骨神経痛と診断されて、何年も脚が痺れている」このような状態の方は多いかと思います。

座骨神経が原因で何年も痺れや痛みが続くことは理論上かなり稀です。
この場合、筋肉に形成されたトリガーポイントが原因のことが大多数です。

座骨神経痛と診断されて脚の痺れでお困りの方は今一度疑ってみてください。