橈骨(とうこつ)神経麻痺の鍼治療【50代男性】

手首が下にぶらさがりペンも持てない状態に

鍼灸院では比較的治療する機会が多い『橈骨神経麻痺』

橈骨神経は首から起こる神経の1つで上肢の運動を司っています。

橈骨神経は主に前腕の伸筋群を動かす神経で、キーボードを打ったり、椅子やカバンを持ち上げたりする動きに関与してきます。

橈骨神経麻痺が起こると『下垂手』と言う状態になり、手が下にぶら下がってしまい自分の力では上げられなくなります。

【下垂手】

橈骨神経は骨に沿って走行している部分があり、骨に密着しています。

この密着している部分は神経が骨と外部からの圧迫を受けやすく、長時間の圧迫が橈骨神経麻痺を引き起こす最も多い原因になります。

例えば、『硬いフローリングの上で寝てしまって圧迫された』、『電車の手すりにもたれ掛かって圧迫したまま寝てしまった』、『腕を枕にして寝てしまった』など、圧迫により発生することが1番多いのが橈骨神経麻痺の特徴になります。

症例、橈骨神経麻痺、50代男性

昨日の夜に手すり付きの椅子で寝てしましまい、起きたら右手が動かない状態になってしまった。

手首が下にぶら下がってしまい起こせなく、カバンも持つことができない。

ペンも上手く握れない為、文字がかけない。

整形外科で橈骨神経麻痺と診断され、ビタミン剤を処方された。

早期に改善させたい為、麻痺が起こった翌日に来院されました。

視診・触診

右手関節の伸展と指の伸展ができない。

治療

まずは神経が絞扼されたことにより麻痺状態になっている橈骨神経に対して直接アプローチしていきます。

その次に、橈骨神経が支配している領域の前腕伸筋群にもアプローチを行いました。

ペンを握る、文字を書く動きも出来なかったので、拇指伸筋群にもアプローチしていきました。

1回目 前日より力が入るようになり、全く動かせなかった指を若干伸展できるようになった。

2回目 さらに力が入るようになる。ペンが握れるようになったが、まだ文字は書けない。

3回目 文字が少し書けるようになってきた。

4回目 手関節を伸展できるようになってくる。

5回目 だいぶ文字が書けるようになってきたが、ペンの握る力がまだ弱い。人差し指の力が弱い。

6回目 あまり重た過ぎなければカバンを持てるようになる。

7回目 文字が以前と同じくらい書けるようになり、人差し指の筋力もだいぶ回復してきた。

8回目 重たい物を掴むなどの動きを除けば日常生活に支障が無くなる。

9回目 1リッターのペットボトルも掴めるようになる。

10回目 約1ヶ月でほぼ元の状態まで回復する。

まとめ

今回のケースでは橈骨神経麻痺発生後、翌日から治療開始することができた為、約1ヶ月という早い期間で改善させることができました。

神経麻痺症状は早期治療開始が望ましいですが、神経麻痺発症後1年経過していても改善している例も多くありますので、諦めずにご相談ください。

当院の橈骨神経麻痺の治療は、上腕骨にある橈骨神経への直接的な鍼治療+前腕にある、橈骨神経が支配している筋肉に対して鍼治療を行います。

一般的に橈骨神経麻痺の治療の場合、整形外科では徒手療法や薬物療法、保存療法が行われています。

正直な話、橈骨神経麻痺は保存療法である程度の時間の経過で、少しずつですが回復していきます。

ですが……時間がかかり過ぎます。

橈骨神経麻痺の場合、橈骨神経が支配している筋肉を動かすことができないので、時間が経過すればする程筋力低下が進行し、筋肉が萎縮していきます。

筋力低下だけならまだしも、筋繊維が硬直してしまい、関節が固まってしまうこともあるので注意が必要です。

神経に対して直接的にアプローチすることが神経麻痺症状改善の重要な治療のポイントです。